税理士がクライアントのいろんな相談に乗って、それなりにクライアントに経済的なメリットのある仕事をしていながら、ある時を機に一気に「報酬返せ」「損害を賠償しろ」という逆襲?を受けるような事件がありました。「そんな馬鹿な」と戸惑いながら、当該税理士が私のところに相談にきました。聞いてみると、確かにアコギな要求です。ただ、税理士にもかなりの勇み足があって、自業自得的な部分もあるのですが、それも、基本はクライアントの利益のためにしたことで、それなりの成果もありました。普通なら感謝されて終わるのでしょうけれど、終わったとたんにこれです。「掌を返す」とは、こういうことをいうのでしょう。クライアントの利益のためではあるけれど、自分も見返りを得ていたことがつけ入られる隙になりました。
その税理士の元クライアントが弁護士を代理人に立てて請求してくれたときにはホッとしました。お互いの情報を整理すると落としどころも見えてきたのですが、この御仁、突如として自分の代理人弁護士にも鉾先を向けて、解任、金返せ(着手金のこと)と言い出しました。当然、代理人間の交渉はできなくなります。そのうち、「紛議だ」「懲戒だ」と弁護士、税理士の一番デリケートなところを突いてきます。それで効果がないとなると、税理士は刑事告訴までされてしまいました。ドラマチックな展開になるのですが、凄まじすぎて一般化、抽象化できないので、ここで話すわけにはいきませんが、税理士にもクライアント側の代理人にも、ものすごく憂鬱な出来事だったのは間違いありません。もちろん、私にもです。
元々は、とても気前のよい、非常にグッドなお客さんでした。税理士も、頼まれごとがあれば領域外でも引き受けて、自分ではできないことは弁護士に相談したりしながら勢力的にこなしていました。税理士本人に言わせると、サービス(無償)の仕事も随分したということです。しかし、親切心であれ、サービスであれ、余計な仕事をしてしまったのが弱みをつくることになってしまったのです。不動産の売却先を探したり、土地の境界確定の交渉をしたりするのは、そのやり方によっては税理士業務の範囲を逸脱することがあります。それによって、難のあった土地が売れたとしても、相手が悪いと逆手にとられることがあります。そのクライアントの職業といい、社会的地位といい、気を許すのも無理はないというものでした。普段の付き合いも紳士的だったのでしょう。最初から、税理士をタダ働きさせ、更にはユスリ・タカリのネタまで蒔いていたとすれば、相手が上だったということになります。 しかし、ほとんどのクライアントはそんなことしませんよね。