3 処分遺産と遺産分割調停・審判の実務
遺産分割の協議書を作成するときは、処分済みの不動産なども遺産分割の対象にして、特定の相続人が取得したことにします。その方がシンプルに相続税の事後的な修正に対応できるからです。換価代金を実際に分けているときはそれに合わせた分割をしていたことにするべきでしょうけれど、煩雑になるのは避けられません。
これが、遺産分割の家事調停となると、処分済み不動産を遺産分割の対象にするのは難色を示されます。たぶん、担当審判官が評議で認めないからだと思います。遺産分割審判の実務に照らしてのことでしょう。
しかし、預金を相続人の一人が引き出して費消していたような案件では、調停では当該遺産預金を費消した相続人が取得する調停は認めているように思います。不動産のように、遺産が代金のような代替資産に変わってしまわないからではないかと想像しています(あまり根拠はありませんが)。
遺産分割が審判に移行すると、確かに処分済みの遺産を分割対象財産には入れてもらえません。
今回の民法改正(法案906条の2)によって、それが認められるようになるのは納得できます。これまでの調停、審判実務がおかしいのだと自分は思っていましたから、なにを今更という感想だったのですが、調停、審判実務が変わるのは歓迎することなんでしょう。
それでも、相続開始時の遺産を確認できるなら、それについて遺産分割をする審判が現行法では何故できないのかとしつこく思います。ぼくが、相続税の申告にとらわれているからなんでしょう。