改正民法の相続法については未だ法案段階です。
ただ、おそらく大きな変更はなく、いずれ成立施行されると思います。
改正民法907条(遺産の分割の協議又は審判等) 1項 共同相続人は、被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。 |
「全部又は一部」が改正部分です。
何をいまさらと思います。遺産の一部分割は現にしています。いまさら明文に規定する必要などあるのでしょうか。
相続税の申告をした経験があれば、各相続人の取得財産を分割済みと未分割に区分して記載するようになっているのを知っています(申告書第11表)。これは、相続財産の一部分割を認めていることになると思います。
たしかに、当然分割財産(可分債権など)がありますから、それを記載するための欄だと強弁することも可能かもしれませんが、相続財産の一部について先行分割すれば「分割済み」として記載しているのは間違いありません。
2項 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。ただし、遺産の一部を分割することにより、他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその一部の分割については、この限りでない。 |
これは、家裁に一部分割を請求できることを認めた規定と言われています。しかし、従前から家事審判でも一部分割はしていました(家事事件手続法73②)。あんまり意味がないように思います。
ただ、他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合には一部分割ができないことになっています。確かにそういうことは起こり得ますね。家裁ならそんな審判はしないと思います。
しかし、協議分割では、うっかり最高価値のある遺産を誰かに分割取得させてしまうということはあり得ます。残りの遺産をどう分けても、他の相続人には相続分に見合う取得財産を得られないことが起こり得ます。一部分割財産を取得した相続人が代償金を支払えれば、まだ公平は図れますが、そんな金銭債務を負担するだけの資力がない場合はどうすればいいのでしょう。
先行した一部分割財産が残っているのなら、遺産分割をやり直したくなりますが、これは遺産分割のやり直し、再分割ということで税法上はリスクが大きすぎます。
それなら、先行一部分割が違法だとして、その取消か無効確認ができるのしょうか。わかりませんが、難しいと思っています。
そもそも、そんな自分の不利益になるような遺産分割をした相続人ですから、訴えの利益があるかさえ疑問です。