問題&リスク2 配偶者居住権
配偶者居住権の消滅と税金①
概 要
配偶者居住権の税金問題というと、その評価額や計算方法、相続税額計算への影響のことばかりが問題にされていますが、私は、相続以外の場面での、相続税の計算以外の課税問題が気になります。
評価だけではありません
その一つが配偶者居住権の消滅に関わる課税関係です。その消滅は、居住建物に付いた制限がなくなるので、所有者が経済的利益を享受することになります。それが課税される理由ですが、消滅の対価が支払われることがありますから、その対価の受領者である配偶者についても課税問題が生じます。
配偶者居住権の消滅には、①期間満了等による消滅、②居住建物所有者の消滅請求によるもの、③配偶者の放棄によるものがあります。
①は課税されません。②も課税されるべきではないと私は解していますが、課税されるとする通達があります。③の放棄には、合意によるものと、配偶者の一方的な放棄とがありますから、別々に検討する必要があると考えています。これも私見です。
当事者の利害関係
配偶者居住権を取得した配偶者がその後に居住建物に住まなくなることは想定できます。
居住建物の所有権を取得した相続人は、配偶者居住権の消滅を望みます。
配偶者と居住建物所有者間の「取引」が予想されます。個人的には、配偶者居住権を取得する相続では、一定期間を経過後にはかなり頻繁に行われるのではないかと思っています。配偶者居住権には相続税の負担軽減以外にメリットはありませんから、配偶者が望んで取得する例があまり想像できないのと、必要がなくなったとしても、換金する手段がこれしかないからです(配偶者居住権は譲渡禁止)。
■ 配偶者居住権の消滅は税金問題です。
■ 相当な対価を支払っていないと居住建物所有者に贈与税が課税されることがあります。
■ 配偶者が得た対価は譲渡所得と扱われます。