弁護士が仕事をしていると、民事紛争が急展開して事件解決の詰めに集中することがしばしばあります。
事件には潮目のようなものがあって、そのタイミングを逃すと、いよいよこじれて解決が遠のくということもありますから、集中するのは当然です。
民事事件は法律関係、権利関係の調整による解決になります。どうしても、権利の実現や負担の軽減などに目を奪われるのは仕方ないことです。その際に、課税問題まで目配りするのを失念して、悔いの残る事件処理に終わることがないようにしたいものです。
一般的な事例問題で考えれば難なく気が付く課税関係でも、現に法的解決を迫られている場面では気付かないことがあります。和解ができてから気付いても手遅れで、悔いが残ります。和解条項のたたき台を自分で作成するような場合であれば課税問題も検討する余裕がありますが、解決方針が決まっているなかで、具体的な和解条項や合意条項を詰めていくような場では特に気をつける必要がありますす。
また、和解や示談では、法律関係を当事者で構築することができます。意味のない権利関係は整理しておいた方が無難です。例えば、家族が連帯で履行を請求されていても、債務額と支払者が決まれば、そしてその履行が確実にされることがわかっているのなら、他の被告の連帯債務などは外しておいた方がスッキリします。連帯債務者から外れたからといって免除益が発生するわけではありません。また求償権などの存在で課税関係に悩むのは無駄なことです。もっとも、事案によっては求償権の行使が必須という場合もあるとは思います。
いずれにしても、和解は法律関係を当事者で調整できるのですが、それに連動する課税関係にも目配せを怠らないことです。結果として課税が避けられないのであれば、弁護士の業務過誤になることはないでしょうけれど、説明不足をクライアントから非難されると気が重いことになります。
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