過払金返還請求訴訟又は債務不存在確認訴訟などの事件で、債権者(金融業者ら)の請求額を大幅に減額する和解は、過払金の返還和解よりも多いかもしれません。
債務が減額しただけでは課税問題は生じないと考えている弁護士もいないわけではありません。実際はともかく、理屈上は課税問題が生じます。学生や主婦、サラリーマンが借りていた債務の減額和解は課税問題を生じませんが、事業資金を借りて利息を支払っていた事業主や法人の場合は、その支払利息の金額を必要経費又は損金の額に算入していたと考えられますから、その全部又は一部の返還を受けたとすると、必要経費又は損金として控除していた金額が実際よりも多額であったことになり、その年又は年度の事業所得又は法人所得及び税額が過少だったということになります。何らかの是正が必要というのは間違った理屈ではありません。
しかし、過年分の申告について修正申告をしなければならないかのかというと、私は不要と解しています。ただし、そこまで訊かれたことはありません。訊かれたら「少額なら無視してもいいでしょう」くらいしか答えられません(情けない)。利限法超過利息の元本充当金額を必要経費・損金に算入して所得金額を計算していたことが違法ではないのですから、修正申告を強いられたり、更正されるというのは納得できません。とはいえ、課税庁は別の見解かも知れません。少なくとも、過年(度)分修正益として和解成立時の収入金額(益金)に算入して是正することを要求されると、理屈としては拒めないと思います。
実際には、和解の場合は、元本充当した利息金額を確定することはしないので、過年(度)のいずれの所得金額計算がどれだけ過少であったかの計算は正確にはできないと思います。したがって、よほどの高額でなければ、課税庁は是正を求めることはないと考えています。
参照
和解の法理と税務/11-0/和解条項(20)
和解の法理と税務V1.7 紹介サイト https://www.yamana-tloffice.com/law-tax1-7/