第三話 キツネ・狸ばらいのためのマッチ
これも森さんの奥さんの話です。奥さんのお母さんが亡くなられて、森さん方でお葬式を出しました。これが無事終って、弔問客や親戚の者が精進落しの会食をして、さて、お客さんたちが帰る時刻になりました。その時間になると外はもう暗くなっていました。奥さんは手土産と一緒に提灯とマッチを渡していたそうです。ただし、このマッチは提灯の火のためではなく、キツネや狸にいたずらされないためだそうです。なぜかというと、キツネも狸もマッチが燃えるときの燐(リン)の臭いが嫌いなんだそうです。
キツネ・狸が燐の臭いを嫌うというのが本当かとうかわかりませんが、昔の夜道には必ず持って歩いたそうです。提灯が懐中電灯に変っても、キツネ封じのためにマッチを持ち歩いていたという話が好きです。