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相続の放棄・承認に係る法律と相続税の問題 |
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質 問【Keyword】 |
回答(一見解) |
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【後片づけと単純承認】
相続人が、被相続人が借りていた家の後片付けを家主から求められています。アドバイスとしては、やめさせるほうが無難でしょうか。 |
単純承認をしたとみなされる可能性は少ないと思います。ただし、明渡義務を履行する範囲で止めることが必要です。リスクを説明する必要はありますが、現実には避けられない相続人の義務でもあります。無難だけではアドバイスにならない気がします。 4-Q5遺品の整理と相続の承認効果 ▶相続の単純承認と見なされる処分行為等 |
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【熟慮期間経過後の相続放棄】
被相続人が死んだのは知っていたのですが、多額の借金があるのに気付いたのは1年後だということです。相続放棄の手続きをしても無駄でしょうか |
原則的には熟慮期間を過ぎているのですが、事情によっては相続放棄の申述(民法938)が認められることもあります。借金の不知について無理からぬ事情があるのなら可能性はあります。 ▶熟慮期間の起算点の実務 1-3-3「相続の放棄と相続税」 |
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【準確申告と単純承認】
相続人は、被相続人の所得税の申告(準確申告)をするつもりですが、それによって単純承認をしたとみなされることを心配しています。 |
準確申告は、客観的に確定している被相続人の税債務を計算して納付義務を履行するだけのものです。単純承認の原因(処分行為)になるというのは疑問です。おそらく、実務は確定債務の履行に準じて扱っていると思います。承認があったとみなした例は知りません。 4-Q5 遺品の整理と相続の承認効果 ▶ 相続の単純承認とみなされる処分行為等 |
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【相続放棄の方法】
相続の放棄をするには、相続人本人でもできますか。本人は、専門家に頼まなくてもできるだろうかと心配しています。 |
被相続人の住所地又は相続開始地を管轄とする家庭裁判所に行って「放棄の申述」をするだけです。申述用紙は家裁に備えつけてあります。また、記載方法なども説明してもらえます。 相続関係が証明できる戸籍書類と住民票などが必要です。なお、意思確認のために審判官が面接をします。 1-3-3「相続の放棄と相続税」3放棄の手続き |
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【相続放棄者が受領した生命保険金】
債務者の相続人は相続放棄をしたようですが、一方で多額の生命保険金を受け取ったとの情報もあります。それが本当なら、債権者はその保険金を差し押えることはできないのでしょうか。 |
法的には無理です。 生命保険金は相続財産ではありません。また、保険金を受取ったことが相続の承認になるわけでもありません。 相続人が相続債務の弁済をするのは債務の承認になりますから、一旦放棄した相続人が債務の弁済をすることは考えられません。 ▶相続放棄をした者が取得した生命保険金等 |
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【相続放棄と基礎控除等】
相続放棄をした相続人が受け取った生命保険金でも、相続税の申告をする際には基礎控除などの恩恵はうけられるのですか。 |
「みなし遺贈」となる生命保険金は相続税の申告対象ですから、遺産に係る基礎控除の規定(相法15①)の適用があります(相続放棄をした者が受領していますから「みなし遺贈」です)。ただし、放棄者には生命保険金等の非課税規定(相法12①五)の適用はありません。 ▶相続放棄をした者が取得した生命保険金等 1-3-3「相続の放棄と相続税」 4 (3) |
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【事実上の相続放棄】 【相続分の放棄】 相続から3か月以上が経ってしまいましたけれど、「遺産は要らない」と言っている相続人が相続をしないで済む方法はありますか。 |
「事実上の相続放棄」といわれている方法があります。遺産を何も取得しない遺産分割や特別受益の証明書作成などがその例です。 それとは別に、相続分の放棄をすることも考えられます。放棄された相続人の相続分は他の相続人らに帰属します。 ただし、相続債務は民法938条以下の「相続の放棄」をしない限り承継します。 ▶事実上の相続放棄 |
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【熟慮期間の伸長】
3か月間では相続債務などの詳細がわからない場合は相続放棄の申述べをしておくようにアドバイスするのが無難ですか。 |
とりあえず期間の伸長を家庭裁判所に請求できます(民法915①)。伸長が承認されたら、その間に債務の調査をするようにアドバイスします。放棄をしてしまうと、債務があることが判明したという理由では撤回できません(同919①)。 ▶熟慮期間の起算点の実務 |
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【熟慮期間伸長の回数制限】
熟慮期間の伸長は1回しかできないのですか。 |
そのような制限はありません。ただし、毎回の伸長を家庭裁判所が認めてくれるとは限りません。 なお、熟慮期間の伸長は相続税の申告期限を変更する効果はありません。 |