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遺留分に係る法律と相続税の問題 |
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質 問【Keyword】 |
回答(一見解) |
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【遺留分の放棄の効果】
共同相続人の1人が遺留分を放棄しています。他の相続人の相続分や遺留分は当然に増えるのでしょうか。 |
影響しません。 遺留分を放棄しても、相続権を放棄することにはなりません。また、遺留分として留保される相続財産は一定割合ですが、一部の遺留分権利者が遺留分を放棄しても他の遺留分権利者の相続分が増えるわけではありませんから、その財産に対する遺留分の割合も影響を受けません。この点は相続分の放棄とは異なります。 |
2 |
【遺留分の相続】
遺留分権利者が遺留分減殺請求権を行使しないうちに亡くなりました。共同相続人が遺留分権利者の相続人であっても、遺留分は相続できないのでしょうか。 |
遺留分減殺請求権は相続できます。 遺留分減殺請求権は行使上の一身専属権です。相続できることについては明文の規定があります(民法1031)。相続人の遺留分の割合は、自身の遺留分に相続した遺留分を加えた割合です。 |
3 |
【相続債務と遺留分侵害額】
遺言者から土地・建物を遺贈されたのは確かですが、それを取得する際の借入金のローンが残っています。他の遺産はすべて別の相続人が取得する遺言でした。遺留分侵害の有無を計算する場合、遺贈された財産の評価はローン債務を控除してもよいのでしょうか。 |
まず、遺贈財産の価額を含めた相続財産から相続債務を控除した金額を基にして遺留分の金額を算出します(民法1029①)。借入金債務を遺留分権利者が承継してローンを返済することに合意したとか、元々その債務の承継を条件とする遺贈だったという場合は、当該債務額を控除して遺留分侵害額を算定します。債務の承継を特に相続人間で決めないのなら、遺留分権利者の相続分相当額を控除して算出するものと解します。 |
4 |
【特殊な経済的利益】
遺産家屋に生涯無償で住むことを遺言書で保障された後妻が、当該建物を含む財産を遺言によって取得した相続人に対して遺留分減殺請求をしてきました。遺言者の意思に反しているのではないでしょうか。 |
遺留分侵害の有無が問題です。遺産の家屋に生涯住めることの経済的利益を相続により取得した利益として遺留分の計算をすることはできると解します。それでも後妻の遺留分が侵害されているのなら、遺留分減殺請求権の行使を法的に否定することは困難です。遺言者の意思は相続人全員に対する配慮だと思いますが、それだけでは遺留分権利者の権利を制限することはできません。 なお、後妻が遺産家屋を無償で借りていることで相続税の課税価格に算入する経済的利得があることにはならないと思います。 |